―3カ月前―

 

 

 

「・・・なんだこれは・・・?」

 

 

 

クラッシュテイル周囲の光景に静かに問う。

 

 

 

(全員死んでいる…何があった…。)

 

 

 

メテオスターの指示に従い、副長に部族を任せて、四部族の移住先を探していた彼は、血と死の臭いを嗅ぎつけ、ここまで来た。

 

 

 

滝の裏の洞窟…。そこは肉片が散らばり、床はそこらじゅうに血がばらまかれている。

 

 

 

「-!!」

 

 

 

「うん?」

 

 

 

何かが聞こえた。…。ゆっくり近づいてくる。

 

 

 

「…。なんだお前は。」

 

 

 

背後、滝を突き破って表れた巨大な影に彼ゆっくり振り返りながら尋ねた。

 

 

 

「キシュァァァァァァ!!」

 

 

 

大きさは立った熊より少し小さいくらいだろう。異様に長いかぎ爪、上半身は皮をはいだネズミに似ている。

 

 

 

「ふん、遊び相手には面白過ぎる…。」

 

 

 

クラッシュテイルは化け物に応戦するため鉤爪を出す。

 

 

 

「シュァァァァァ!!」

 

 

 

敵の爪が振り下ろされ、洞窟の床を抉る。

 

クラッシュテイルは跳躍してかわしたのだ。

 

 

 

「デカブツがっ!!」

 

 

 

クラッシュテイルは胴体を駆け上がり、目を刺した。

 

 

 

敵が悲鳴を上げて彼を振り落とす。

 

 

 

「ふん・・・。」

 

 

 

着地した彼に対し、逆上した化け物が洞窟の天井に生えた石のつららを落としてきた。

 

 

 

彼は飛びのいてかわす。が、

 

 

 

「ぬおっ!?」

 

 

 

うかつだった。敵が反転してその巨大な尾をたたきつけてきたのだ。

 

 

 

「ぐっ・・・。」

 

 

 

岩壁に叩きつけられた。撃たれづ良さにはそこそこ自信があるが、大ダメージに変わりない。

 

 

 

怪物が勝ち誇ったように爪を振り下ろしてくる。

 

 

 

「チィッ!!」

 

 

 

彼は押しつぶされるのを覚悟した。

 

 

 

しかし、

 

 

 

(・・・。なに?)

 

一瞬何が起きたのか認識しかねた。

 

 

 

敵の爪が真っ二つに砕け、悲鳴をあがている。

 

 

 

「なんだ、この光は・・・?」

 

 

 

そして自分の周囲を赤い光が包んでいる。

 

彼はそれに尻尾の刃を伸ばしてみた。

 

 

 

ブゥゥゥゥゥゥン

 

 

 

羽虫が飛んでいるような音とともにそれは集束し、やがて光の剣になっていた。

 

 

 

「なるほど…。こういううことか。」

 

 

 

メテオスターの言っていた“力”を彼はやっと理解した。…面白い!!

 

彼は剣でもう一方の鉤爪を切断し、飛び上がる。

 

 

 

ザッ!!

 

 

 

クラッシュテイルが着地する。空中前転とともに相手の頭から垂直に斬りおろしてやった。

 

以外にも返り血を浴びていない。

 

なるほど、この剣は“斬る”のではなく、“焼き切る”のか。・・・むっ!

 

 

 

素早く後ろに飛びのく、何かを吐きだしてきた。

 

 

 

「くせぇ・・・。胃液か?」

 

 

 

こいつは一体どんな体の作りをしてやがる?

 

 

 

「“これ”が、光と熱なら、こんなこともできるか?」

 

 

 

立ち上がって尻尾を腰だめに抱える。ちょうど人間が銃を撃つ時のように。

 

 

 

シバァァァァ!!

 

 

 

怪物の巨体が崩れ落ちる。思った通り、光線が出た。

 

後ろから驚いた猫の声がした。

 

その猫は彼の知る猫によく似ていた。確か、グレーストライプといったか。だが匂いが違う。

 

 

 

「お前、誰だ?」

 

 

 

 

 

 

 

この戦いを見つめる影があった。

 

 

 

「データ収集完了。まっ、これくらいか。」

 

 

 

謎の影がクラッシュテイル達を見つめ、消えた。