プロローグ3

その猫は幸せだった。そう、あの日が来るまで・・・。

 

「プロメテオ!?なんなんですの?その人たちは!?」

 

彼女は夫に向かって叫んだ。

 

「こいつらは素晴らしいぞ、ベリッシー。お前も来い。」

 

彼女の夫、プロメテオは両脇に骨の鎧を着た猫を従えて手招きした。

 

「い、・・・いやっ!!」

 

彼女は拒否した。理由などない。ただ本能がそっちに行くなと警告していた。

 

「なぜだ?恐れることはない。こいつらと一緒のいればもうこそこそしなくて済むんだぞ?」 「なあ、ベリッシー。俺たちは夫婦だろ?」

 

「プロメテオ・・・一体どうしたの?何をされたの?」

 

「力を授けてもらったのさ。最強の力をな…!」

 

夫の顔はどこか狂気に取りつかれた様だった。

 

「……。まあいい。連れて行け。多少乱暴してもかまわん。」

 

夫の口から信じられない言葉が出た。自分を愛しているといった彼が、自分が傷付いてもかまわないだなんて・・・!

 

取り巻きの二匹を残して夫はどこかに飛び去り、部下がこっちに寄ってくる。

 

「こっ、・・・こないでください!!」

 

ベリッシーは恐怖で目をつぶったその時だ。

 

バキィ!!

 

何か乾いた音と悲鳴が聞こえ、薄目をを開けると、一匹の猫が戦っていた。 その猫は素早く正確に敵を捉え、パンチをねじこんでいく。 するとどうだろ。殴り飛ばされた猫が灰になってしまった。

 

(一体…何が!?)

 

戦っていた猫がこちらに気づいた。彼女は反射的に身構えたが、帰ってきた言葉はその行動に不釣り合いだった。

 

「よかった。無事みたいですね。」

 

「あ、あなたは?」

 

その猫は三毛に角を生やしていた。あまり若くはないが、声や表情は若々しい。

 

「俺、ジンジャーって言います。あなたは?」

 

「ええ、ベリッシー…と申します。」

 

「そうですか、ベリッシーさん。ここは危ない。俺についてきてください。」

 

ジンジャーといった猫が真剣な顔で告げてくる。

 

「一体、何が起こってるんですの?」

 

「詳しいことは安全な場所に着いてから話します。こっちです!」

 

ベリッシーはまだ混乱していたが、彼について行くことにした。

 

しばらくすると、森の中に猫数匹ちょっとが入れそうな空き地が見つかった。ニ匹の猫がいる。

 

「つきましたよ。」

 

ジンジャーが言うと、一番近くにいた一匹、灰色に四枚羽の猫がこちらに気付いた。

 

「戻ったかジンジャー・・・ん?」 「おっと、レディ、これは失礼、さぁこちらにどうぞ。」

 

灰色の猫が尻尾でササッと地面をはたいて、ベリッシーをエスコートする。

 

「ありがとうございます。」

 

ベリッシーは座るともう一匹、シアンブルーの猫と目があった。

 

「はじめまして。」

 

シアンの猫は丁寧に挨拶をした。

 

「えっと、じゃあ、紹介します。俺の仲間で、助平なのがグリフィン。おとなしいのがペガサス君です。」

 

「わたくしはベリッシーです。どうかよよしくお願いいたします。」

 

ベリッシーが優雅にお辞儀をする。

 

「おいっジンジャー!!誰が助平だ!!誰が!!」

 

「あはは、君以外にだれがいるんですか?」

 

「てめぇ・・・あとで三味線にしてやる・・・!」

 

「おお、怖い怖い。」

 

二匹のやり取りを見ながら、ベリッシーはペガサスに訪ねた。

 

「いつもあんな感じなんですの?」

 

すると彼は少し苦笑しながら言った。

 

「そうですね・・・ははは・・・。」

 

「まあ、にぎやかですこと。」

 

談笑しつつも彼女の脳裏は夫と骨の一団のことを気にかけていた。

 

これが彼女、ベリッシーの戦いの始まりだった。