第二の来訪者

 

 

朝のまぶしい光が部屋に差し込んできて、スクワーレルフライトは目を覚ました。

 

オークファングとブラックポーの一件から三日たった。

 

この三日間は、とくに新しい報告もなく、被害もでていない。

 

ファイヤスターはパトロールを増やし、日々の変化に気をくばっている。

今日も何事もなければいいのだが。

 

 

スクワーレルフライトは戦士部屋からでた。

 

すると、白猫のホワイトクローが声をかけてきた。

 

「おはよう、スクワーレルフライト」

 

「おはようございます、ホワイトクロー」

スクワーレルフライトは軽く会釈して答えた。

 

「朝のパトロールに行かないか? 今、集めているところなんだ」

ホワイトクローが提案してきた。

 

特に断る理由もなかったので、スクワーレルフライトはその提案を受けた。

 

ホワイトクローが他の猫を集めにいったので、スクワーレルフライトは出口で他の猫を待った。

 

 

「おはよう、スクワーレルフライト」

突然の声に驚いて振り向くと、ニコルがいた。

 

「なにをしてるんだい?」

 

「おはよう、ニコル。今は朝のパトロールのメンバーを待っているところ」

スクワーレルフライトは答えた。

 

 

そのとき、ホワイトクローがブルーストームとゴールデンクラウドをつれてキャンプの出口へやってきた。

ホワイトクローはそこにニコルがいることに気づき、顔をしかめた。

 

「何故おまえが今ここにいるんだ?」

 

「スクワーレルフライトと話をしていたんです」

ニコルが答える。

 

「あの」

ニコルがいう。

 

「僕もパトロールに参加させてもらえないでしょうか? ずっとキャンプ内にいるのもなんですから」

 

ホワイトクローがじろっと横目でニコルを見、いった。

「いいだろう。足手まといになることだけはするなよ」

 

そういうと、先頭を切ってすたすた歩きだした。

 

ホワイトクローはもともとよそ者には冷たいところがある。

 

だが、ニコルをよく思っていないのはホワイトクローだけではないのはわかっていた。

大半の猫はひょっこり現れたニコルをよく思っていない。

 

ニコルはそんなに悪い猫じゃないのに。

 

 

六匹はシャドウ族との境界線をまわった。

 

ゴールデンクラウドが立ち止まった。そして声をかけた。

 

「これを見てください。ブルーストーム」

 

ブルーストームが歩み寄る。「何?」

 

 

二匹がなかなかもどってこないので、スクワーレルフライトとホワイトクローとニコルも二匹のもとへいった。

 

そして二匹の間からのぞきみた。

 

「・・・・・・」

スクワーレルフライトは絶句した。

 

「これは・・・なにかの毛か」

ホワイトクローがいう。

 

そこにあったのは、ハトの死体と白い毛だった。

 

その毛は、かたくごわごわしていて猫の毛ではなかった。

 

スクワーレルフライトはファイヤスターとともに見たお告げを思い出したが、口にはださ

ないようにした。

 

 

ニコルがスクワーレルフライトのようすを気遣い、声をかけた。

 

「どうしたんだい?」

 

スクワーレルフライトは目はその白い毛を凝視したまま答える。

「いえ、なんでもないわ」

 

「この白い毛が何かあるのかい?」

 

スクワーレルフライトは首をふった。

「本当に何もないの」

 

ニコルはそれ以上は聞いてこなかった。

 

 

「これは、ファイヤスターに持っていったほうがいいんじゃないかしら」

ブルーストームが提案した。

 

「そう・・・ですね。何かあったら報告しろっておっしゃってたし」

ゴールデンクラウドが答える。

そして、その白い毛をくわえた。

 

 

六匹はシャドウ族との境界線をまわったあと、キャンプへもどった。

 

そのあいだ、スクワーレルフライトはずっと考えていた。

 

やっぱり、このまま何事もなく終わることはなかった。

まだ、脅威は森から消え去っていないんだ。

 

どうすればいいんだろう。

 

 

キャンプについて、ゴールデンクラウドはファイヤスターの部屋へ向かった。

 

スーレルフライトはリーフプールと話すために、看護部屋へ向かおうとした。

 

すると、ニコルがキャンプの出口を振り返りいきなりつぶやいた。

 

 

「・・・・・・ホーリーナイト?」

 

そうつぶやくと、いきなりかけだし、キャンプから走り出て行った。

 

スクワーレルフライトは不思議に思い、ニコルを追いかけた。

 

すると、ニコルの白い姿が見え、相手に問いかける声がきこえた。

もっと近づくと、黒い小柄な猫の姿が見えた。

 

 

黒猫はだいぶ衰弱しているようで、とぎれとぎれで苦しそうに何かを答えた。

 

スクワーレルフライトの知らない言葉だった。

 

それを聞いてニコルも知らない言葉で何かをいう。

 

スクワーレルフライトは二匹のそばへよった。

 

「ニコル、この黒猫は誰?」

ニコルに問い、黒猫の方をむいた。

 

黒猫は、疲れきっており、傷だらけだった。

 

そして、首にはオレンジ色の布を巻いていて、中に何か入っているようだった。

 

「あなた、飼い猫? 早く立ち去りなさい。ここはサンダー族のなわばりよ」

 

 

黒猫は、口を閉ざしそっぽをむいた。

 

スクワーレルフライトは爪を出し、黒猫に襲い掛かる姿勢になる。

ここはサンダー族のなわばりなのだ。追い出さなければ。

 

すると、ニコルが間に入った。

「ごめん、スクワーレルフライト。こいつ、僕の知り合いなんだよ」

 

スクワーレルフライトは止まった。

「知り合い?」

とまっても警戒の姿勢はやめない。

 

ニコルはうなずき、いった。

「こいつ、船に乗せられて、ここまできたらしいんだ。偶然なんだよ。サンダー族に危害を及ぼすことはない」

 

黒猫がスクワーレルフライトのほうをむいて、苦しそうに話した。

 

「そ・・・れに、俺はもう飼い主…はいない。今・・・は飼い猫じゃない・・・」

 

ニコルが驚いた。

「おまえ、ここの言葉覚えたのか?」

 

黒猫がフッと笑顔をニコルに向ける。

「バカに・・・してくれるなよ。この俺だ」

 

「とにかく、キャンプまできて。ファイヤスターに会ってもらうわ」

スクワーレルフライトがそういうと、黒猫は少しむっとしたようだった。

 

「なんで・・・俺が」

 

ニコルが黒猫に言う。

「ここはこの猫たちのなわばりなんだ。いうことをきいたほうがいい」

 

それをきいて、黒猫はしぶしぶニコルの助けを借りて立ち上がった。

 

スクワーレルフライトはそれを確かめ、先を歩きだした。

すると、後ろから声がきこえた。

 

「もう、あの人の手紙は届けたのか?」

 

「いいや・・・まだなんだ。ここは違う国なんだよな?」

 

「そう。しかも結構な距離だぞ。どうするんだ? どうやって届けるんだい?」

 

「また船に乗って・・・もどらなければならないんだろうな」

 

「おまえ、傷だらけじゃないか。どうしてそんなに」

 

「色々あったん・・・だよ。・・・・・・それより、本当はこんなことしてるひまなんかないんだ。時間がない」

 

「少し休め、ホーリーナイト」

 

 

スクワーレルフライトは黒猫の名前はホーリーナイトというんだな、と思った。

 

二匹が話していた内容の意味は全然分からなかったが、このホーリーナイトという黒猫がわけありだということは分かった。

 

今は、とにかくファイヤスターに会わせよう。

ファイヤスターならどうすればいいか分かるはずだ。

 

 

 

キャンプの中に入ると、まわりにいた猫たちがざわついた。

 

ニコルと一緒に新たなよそ者が入ってきたのだ。

無理ないだろう。

 

しかしどの猫たちも近寄ってくることはせず、遠巻きに見ている。

スクワーレルフライトはそのままファイヤスターの部屋へ向かった。

 

 

「ファイヤスター。スクワーレルフライトよ」

部屋の中へ呼びかけた。

 

すぐに返事が返ってきた。

「スクワーレルフライトか、はいっていいぞ」

 

「ちょうどよかった。少し話したいことが・・・・・・」

ファイヤスターはそこまでいうとスクワーレルフライトの後ろにいた黒猫に気づき、話すのをやめた。

 

「その猫は?」

 

「キャンプの出入り口の外にいたの」

スクワーレルフライトは答えた。

 

「追い出そうとしたら、ニコルが知り合いだといって」

 

ファイヤスターは後ろにいたニコルとホーリーナイトを見、問いかけた。

「名はなんという?」

 

ホーリーナイトはボソッと答える。

「ホーリーナイト」

 

ニコルがファイヤスターにいった。

「ファイヤスター、お願いです。ホーリーナイトもここにおいていただけないでしょうか。こいつ、傷だらけだし、ずっと何も食べていないんです」

 

ファイヤスターはきびしい顔を崩さないまま、話す。

「ホーリーナイト、おまえがサンダー族に危害を及ぼすのなら、俺は追い出さなければならない」

 

ホーリーナイトはファイヤスターをしっかと見、答えた。

「俺・・・は、無駄な殺生は、しない主義・・・です」

 

ファイヤスターが答える。

「ならば、ここにおいてやろう。しかし、あつかいは捕虜ということになる。ニコルと同じ場所で寝ること。キャンプを出る時は誰か戦士と一緒に行くこと。それだけは絶対に守れ」

 

ホーリーナイトはうなずいた。

 

 

ファイヤスターは部屋の出口から顔を出して外にいたグレーストライプになにやら指示をした。

 

そして再びこちらを見、言った。

 

「もう出て行っていいぞ、ホーリーナイト。ニコル、グレーストライプと一緒にホーリーナイトをリーフプールのところへ連れて行ってくれ

 

「それと、スクワーレルフライトは残ってくれ」

 

 

二匹が出て行った後、ファイヤスターは話し出した。

 

「なあ、スクワーレルフライト。この白い毛に見覚えはあるかい?」

 

ファイヤスターが差し出したそれは、朝のパトロールで見つけた白い毛だった。

 

「あの・・・夢の」

スクワーレルフライトは記憶をたどりながら答えた。

 

確か、白い牙と黄色い目とともに少しだったが白い毛も見えた気がしたのだ。

 

「俺もそうだと思う。いま、森に脅威をもたらしているもの・・・もしくはもたらすものの毛なのだと」

ファイヤスターがいった。

 

「俺が見た夢の白い毛はまさにこんな感じだった」

 

ファイヤスターがそういうのをきき、確信はさらに深まった。

これは脅威の毛なのだろう。

 

「森にいるってこと…」

 

スクワーレルフライトがつぶやくと、ファイヤスターがうなずいた。

「そうだろう。きっと、まだこのあたりにいるはずだ」

 

ファイヤスターは白い毛に向けていた目線をあげた。

 

「今夜は大集会だし、他の部族とも情報をききあおうと思う」

 

スクワーレルフライトはうなずいた。

 

「スクワーレルフライト、部屋を出たら、グレーストライプを呼んでくれ」

スクワーレルフライトはもう一度うなずき、部屋の出口へ向かった。