天上の者達
「あんた…スター族か?」
銀色のオーラを放つ猫にグリフィンは問いかけた。
「その通り。私はスター族の中でも最初期のメンバーだ。そして、今は命を終えた者たちを率いている。」
「・・・なるほどあんたか、俺たちを呼んだのは。」
「いかにも。もっと早くにこの場に呼ぶべきだったがな。」
どうやら察するにこいつがスター族の族長らしい。しかしそんな大物が俺やジンジャーに一体何の用があるのだ?
「OK、Mr。で、そんな大物がこのさすらいに何のご用で?」
「うむ。二匹ともまず座ってくれ。長い話になる。」
二匹は岩の下のちょうどいい位置に座った。
「・・・さてどこからはなそうか。」
「あなただったんですね。何度も夢で俺を呼んでいたのは。」
「その通りだ角猫よ。…うむ。ではそこから話すとしよう。」
メテオスターがコホンッと咳ばらいをし、話はじめた。
「我らスター族がお前達二匹を呼んだ理由。それは今、森で暴れている二匹から我らの子孫を守ってもらうためだ。」
「・・・やっぱりか。ファイアハートもそうなのかい?」
「いや、彼はこの先起きるであろう悲劇から一族、いや森全体を救うであろう戦士だ。今回の予言とは関係ない。」
「そうか。だが森の連中も俺らの力なんか借りなくても、なんとかできるんじゃないか?」
「そうですよ。それにあなたたちだって力を貸して上げれるはずです。」
するとメテオスターは悲しそうにうつむき言った。
「その通り。確かに本来、我らが導かねばならん。しかし今回はそうもいかないのだ。」
そこまで言うとメテオスターはさっと前足を掲げた。
「-!?」
「な…地面が!?」
彼らの足元が突如、星の輝く夜空に変わったのだ。まるで宇宙に浮いているかのような錯覚を覚える。
メテオスターが今度は左足を掲げる。すると彼らの横に氷の壁が現れた。
「古(いにしえ)から現在(いま)まで続く歴史・・・たくさんの命が生まれ、たくさんと命が散って行った。この世を離れた魂はこの天上の森にたどりつく。」
氷の壁に母猫に抱かれる目もあいていない子猫や、戦いに飛び込んでいく戦士などが映し出される。
「しかし、歴史が長ければ長いほど悪もまた増えるのだ。」
すると今度はまだ若いメテオスターとその他数匹の猫が映し出された。
「私がまだ戦士だったころの森は荒れていた。当時、森に掟はなく、昼夜問わずの勢力争いで多くの者が命を落とした。」
若いメテオスターが仲間と共にだれか…メテオスターとそっくりだが邪悪な顔をした猫と戦っている。
「今のはダークノワール。私の叔父だ。」
「生前の私は仲間とともに叔父に反逆し、勝利した。」
「だが叔父は死してなお、森を支配するため、復讐のために力を蓄え続けていたようだ。」
「・・・!」
「そう、今スター族はかつてない総力戦を挑まれている。」
そこまで言うとメテオスターは前足を上げ、地面を元に戻し、氷のスクリーンを消した。
「もうじき夜が明ける。・・・無関係の君たちを巻き込んでしまったこと・・本当にすまないと思っている。」
メテオスターが深々と頭を下げる。
「…フッ、いいってことよ。なあ、相棒?」
「ええ、頭を上げてください。」
グリフィンはニヒルな、ジンジャーは柔らかな笑みを浮かべて話しかける。
「しかし…。」
「確かにデンジャラスではあるが、そんなの旅を始めてから覚悟してる。」
「あなたたちだって大変なんです。俺の力で良ければ、いくらでも貸しますよ!」
「旅をしながらいろんな物を見て、いろんな奴にあって、いろんな奴と仲間になる。それが俺の旅、俺の猫生さ。」
グリフィンはメテオスターと向かい合って言った。
「心配すんな。乗りかかった船だ。最後まで付き合ってやるさ。」
グリフィンは前足でメテオスターを指しながらウインクをきめた。
輝く朝日を浴びて、彼らは天上の四本木を去って行く。
一匹は森の奥に、二匹はその全く逆に、彼らの新たな戦いが今、始まるのだ。