幻想の彼

 

 

「猫股は頭脳戦が得意だと聞いたが?」

 

夜枯は黒猫を見下しながら言う。

 

「誰から聞いたんだか。 頭脳戦大好きだぜ?」

 

見えない床に座り、夜枯を見上げる吉祥。

 

「しかし、頭脳戦とは言い難い、肉弾戦ばっかりだがな。」

 

「ギャラリーがいるからね。 それにカラス相手じゃ勝手が悪いし。」

 

「何とでも言うがいい。 猫股は肉弾戦が苦手なのであろう? なら私が有利なのだ。 殺させてもらう。」

 

「だからカラスとは分が悪いんだよ。 猫股は相手を出し抜ければそれだけで勝ちなのに。 みんな命を奪おうとする。」

 

「しかしいままで猫股同士だけで戦っているわけではあるまい。」

 

「ああそうさ。 俺だって場合によっては殺さなくちゃいけない。 今とかね。」

 

「ふん。 猫股の霊力を持った血肉はさぞ美味であろう。」

 

「随分と食い意地の張った八咫烏だよ。ここらで俺が絞めてやろう。」

 

「お前よりも私の方が長く生きているのだ。 ただのカラスと思ったら勘違いだ。」

 

「知ってる知ってる。 だから夢を操れた。」

 

「そんな程度であろう。 お前は既に私の手の中にいる。」

 

「カラスに手なんてないでしょ。」

 

「…。 どうでもいい。 お前はすでに私に負ける運命を背負わされている。」

 

「いいんじゃない? 負けるのだっていい勉強になるし。この会話のメインは時間稼ぎだし。」

 

「あのガキ2匹をキャンプに着くまで時間稼ぎか? 残念だ。 もう私の部下が殺しに行ってる。」

 

「さすがカラスだよ。 鳥頭な所は鳥なんだね。 あいつらが死ぬことはないぜ。」

 

 

 

 ※  ※  ※  ※

 

 

「ここどこ~?」

「おかしいなぁ。 真っ直ぐ歩いてるんだけど…。」

 

シンダーポーとブラクンポーは森の中を右往左往していた。

 

「ここの道さっき来たわよ?」

「さっきはこっちに歩いて行ったから次はこっち?」

「そっちはその前に行ったわ。」

「そうかな?」

「行ったわよ。 だから次はこっち。」

「そっちは今来た方だろ。」

「え~?」

 

見事に道に迷っていた。

 

「随分と楽しそうじゃないかおちびさん達。」

 

2匹の頭上に現れるアグス。

 

「お前たちを無傷でキャンプに戻すわけにはいかない。」

 

アグスは2匹に向かって下降する。

 

シンダーポーとブラクンポーの合間を通り抜けた!!

 

 

「なによこいつ!! 追い払っちゃうわよ!!」

 

シンダーポーがアグスに向かって攻撃体制に入る。

 

「ダメだよ。今は攻撃できない。」

 

ブラクンポーが冷静に言う。

 

「ほほう。 そっちのボウズは分かってるようだな。」

 

アグスは少し驚く素振りをする。

 

 

「何故分かる?」

アグスはブラクンポーを睨めつけ、理由を求める。

 

「さあ。そう思っただけ。」

ブラクンポーは怯まずに睨み返す。

 

 

シンダーポーはブラクンポーの様子がおかしいことに気づいていた。

 

 

「ブラクンポー・・・ あなた、本物なの?」

シンダーポーは真面目に問う。

 

「…。 そう思ってしまうのはこいつの術の力だよ。 こいつの術のせいで僕らは森で迷っている。」

 

「そうじゃないわ! 私の弟のブラクンポーはそんなこと知らないはずよ!!」

 

シンダーポーは、アグスの羽ばたく姿を視界の隅に捉え、襲い掛かってきたところで体制を低くして足の爪を逃れた。

 

 

「…。 どうやら、術の反応じゃないみたいだね。 たかが下っ端カラスの術。 僕らを迷わせるだけで限界だったようだ。」

ブラクンポーは淡々と呟く。

 

 

「アグスは森の一部と僕ら2匹を対象に術をかけた。 その条件が崩れるとき…。

 

 

「やあああああああ!!!!!」

 

シンダーポーの背後からブラクンポーの声が響く!!!!

 

 

「結界が崩れる。」

静かにブラクンポーが呟いた。

 

「ブラウンポーが… 2匹!?」

 

そう。シンダーポーと一緒に歩いていたブラクンポーと、シンダーポーの背後から現れたブラクンポー。 

突如現れたブラクンポーはアグスに飛び掛かった!!

 

「う… うわあ!!!!」

術を完全だと思い込んでいたアグスは、いきなりの攻撃に怯み、術がすべて解ける。 そして地面に落下した。

 

「あとはこちらの番だ。」

 

最初からいた方のブラクンポーはカラスに向かって走る。

 

 

 

シンダーポーの目の前では2匹の全く同じ弟がカラスと戦っているのだった。

 

 

アグスは足の爪で猫たちを引っ掻こうとするも、やはり地上では全く敵わない。

 

そこをどちらかのブラクンポーが牙を立て、思いっきり投げた!

 

 

アグスは木に頭をぶつけ、ドサリと地面に落ちる。

 

 

「く・・・ くそう・・・ 覚えていやがれ!!」

 

そう言うと、よろよろと立ちあがり、なんとか羽を広げてどこかへ飛び去って行った。

 

 

 

  ※    ※    ※    ※

 

 

 

「姉さん!! 無事だった!?」

「う… うん。」

「怪我してない?」

「うん・・・。」

「良かったぁ…」

「良かった。」

 

「あの~…。」

シンダーポーが口を開く。

 

「どっちが私の弟のブラクンポーなの?」

 

地べたに座るシンダーポーとその両脇に座るブラクンポー(×2)。

シンダーポーは2匹の全く同じ弟に狼狽えて(ウロタエテ)いた。

 

「「それは…」」

 

2匹同時に喋り、

 

「僕だよ。」

 

片方のブラクンポーが言った。

 

 

「4本木に行く前、キャンプを抜け出してすぐ、僕が一度、茂みを振り返っただろう?」

 

「ええ。でも誰もいなかったわよ?」

 

「あの茂みには吉祥がいて、僕は茂みの中に呼ばれたんだよ。 そして、『姉は僕が守るから、君はここで待ってて。 君が待ってないと最後に姉を助ける猫がいなくなってしまうんだ。』って言ったんだよ。」

 

「え? ずっと一緒にいたじゃない。」

 

「一緒にいたよ。 僕がね。」

 

反対側のブラクンポーが答える。

 

「吉祥さんが僕を茂みに呼んだ時、僕とすれ違って僕と同じ姿をした猫が茂みから出て行ったんだ。 僕はそれからずっと茂みで待ってたんだよ。。」

 

「じゃあ、あなたは誰なの?」

 

シンダーポーは、偽物のブラクンポーに聞く。

偽物のブラクンポーはニコリと笑って言った。

 

 

「僕は、吉祥の分身。 というより吉祥の式神です♪」

シンダーポーとブラクンポーが同時に首を捻ったので、吉祥の式は解説をする。

 

「式神というのは、吉祥の力で姿と心を貰った人形で、力の加減によって性格が作れたりします。 僕は、ブラクンポーそっくりに作られたのですが、あの八咫烏… 夜枯の力で僕の術が消えかけたから、あの場所をすぐに去ったんだけど、結局ブラクンポーの性格が消えちゃったみたいで、性格が変になっちゃったみたい。」

 

 

もちろんシンダーポーとブラクンポーには理解できなかった。

 

「・・・。 つまり! 僕は吉祥に作られたんです!」

 

話を聞いていた2匹は顔を見合わせる。

 

「僕は命を持っていません。 吉祥から注がれた力が尽きた時点で僕は消えてしまいます。」

 

 

「でも、なんでブラクンポーが助けに来れたの?」

 

「僕は、茂みで待ってた時に、僕の声で助けを呼ぶ声が聞こえたんだよ。『ちょっとそこから真っ直ぐ走ってごらん。』って。 それで、『そこの石を動かしてごらん。』って言われて、動かしてみたら、森の中に、カラスに襲われそうになってる姉さんが見えたんだよ。それでカラスに飛び掛かったんだよ。」

「僕が導いたんだよ。というかそうするように吉祥に命令されたんだよ。」

 

「吉祥さんって・・・」

「どんだけ・・・」

 

2匹の脳裏に吉祥が「エヘ♪」と笑った顔が浮かんだ。

 

 

 

「さあ。 もうすぐ夜明けだよ。 今日の出来事は吉祥が族長に報告してくれる。 キャンプに戻るまで君たちは部族の猫たちに気づかれない。 僕の役目はこれまでだ。 じゃあね。」

 

 

吉祥の式は、最期に笑うと、煙になって消えてしまった。

 

 

 

足元に、小さな紙切れを残して。

 

 

「…行こう。」

「…そうね。戻らなきゃ。」

 

 

2匹はキャンプに向かって走った。

 

 

 

さて、吉祥の戦闘描写の苦手さ、シリアスの苦手さが滲み出ておりますww

 

ブラクンポーのキャラ崩壊と見せかけて実は吉祥の式神でしたテヘ★

まあキャラ崩壊は免れなかったようですが・・・・w

 

ブラクンポー=とにかく姉思いな冷静な子

シンダーポー=直感を過信する恐れない単純っ子(?)w

 

で書きましたw

 

アグスは、それなりに術使えるけど、空間を操る力は得意だけど、夢や幻視を操る力は苦手みたいですw

 

ちなみに、前の17ページの僕のコメの中に隠し文字があったの気づきましたか?ww 気づくわけないけどww

とりあえず吉祥vs夜枯の文章が書けない。

そしてイカのシュチュエーション忘れてた!!!www