古い友人

 

 

死を覚悟したそのときだった。

 

「ちょっとタンマ!!」

 

懐かしい声がした。

 

「なんだ?」

 

マッディストリームも動きを止める。

 

向こうから駆けてくる猫にピントを合わせる。

 

その猫は美しいトラ柄の猫だった。

 

そう、自分とそっくりの。

 

「あなたは・・・・だれ?」

 

その雌猫はこっちへ来るなり水色の目を真ん丸くした。

 

「だれでしょう?」

 

昔の記憶をたどっていく。

 

「・・・・・もしかして、ミルキーファー?」

 

「覚えてくれていましたか!!」

 

この猫は、自分が見習いのころに四兄弟でやってきて、一週間ぐらいでいなくなった猫の一匹だ。

 

「おい、何でいいところを邪魔するんだ?」

 

マッディストリームが怒鳴る。

 

「ああ、いたいた。張本人さん」

 

「お前はどいてろ。話ならこの猫を始末した後にしてくれ」

 

「本当に私の前でウィンタースノウを殺すんですか?」

 

「なんか悪いか?」

 

「いいえ、べつに。じゃ、どうぞ」

 

ミルキーファーは軽蔑したように尻尾を振って一歩下がった。

 

木の下敷きになっているウィンタースノウは、何も出来ずに自分の最後を待った。

 

何でミルキーファーは助けてくれないのかしら・・・・・

 

マッディストリームは鉤爪を振りかぶった。

 

だが、なかなか突き刺そうとせず、躊躇している。

 

「何で殺らないの?」

 

ミルキーファーの馬鹿にしたような声が聞こえる。

 

「なんでって・・・・・なんでって・・・・・」

 

マッディストリームは腕を下ろした。

 

「お前は知ってるんだろ?俺の本当の気持ち・・・・・・・」

 

「ええ。もちろん」

 

ウィンタースノウは混乱して二匹の猫を見つめた。

 

「さあ、この木をどかしましょ。あなたの力なら簡単でしょ?」

 

マッディストリームは頷くと、渾身の力をこめて倒木をどかした。

 

自由になったウィンタースノウは困りはてて座った。

 

ミルキーファーの言葉にマッディストリームの性格はがらりと変わってしまった。

 

これは演技かしら?

 

でも、そんなふうには見えない・・・・

 

どうしたらいいかわからないまま、ウィンタースノウはミルキーファーを見つめた。

 

雌猫はその視線を感じたらしく、話し出した。

 

「マッディストリーム、ウィンタースノウに話してやりなさいよ」

 

マッディストリームが頷く。

 

「ウィンタースノウ・・・今までごめん・・・本当は・・・俺たちは・・・みんなお前たちのことが大好きなんだよ・・・」

 

「でもな・・・タイガースターの命令に背くと・・・殺されるから・・・」

 

「いいのよ」

 

ウィンタースノウはマッディストリームの毛に顔をうずめた。

 

「さて、そろそろスター族様のご指示に・・・」

 

「え?なに?」

 

「あのね、ウィンタースノウ・・・・私はスター族から・・・・・この猫を殺すよう命じられたの・・・・」

 

「え?何で?」

 

「説明するのは難しいの・・・・でも、ごめんなさい!」

 

ミルキーファーは近くの大きな木に思いっきり体当たりをした。

 

その瞬間、たくさんの雪がマッディストリームの上に落ちる。

 

「マッディストリーム!!!」

 

「なんてことを!!!」

 

ミルキーファーは涙を流しながらウィンタースノウの毛に顔をうずめた。

 

「本当にごめんなさい・・・・でも・・・・あなたもいづれ分かるからっ!!!!!!!!」

 

その言葉を残して、ミルキーファーは消えた。

 

呆然としたウィンタースノウは、急いで雪に埋もれた兄のもとへ向かった。

 

「兄さん!?」

 

ウィンタースノウは必死に雪をかきわける。

 

いつか、レッドイヤーも雪に埋もれて亡くなった。

 

この雪はそのときの二倍はある。

 

どうしよう!!

 

必死になってやっていると、こげ茶色の毛が見えた。

 

数分かかって顔の部分だけ掘り起こした。

 

「マッディストリーム?」

 

「ウィンタースノウか・・・・?」

 

ウィンタースノウの心に安堵が広がる。

 

「まっててね、兄さん・・・・・今助けるから!」

 

「もう無駄だ・・・俺は・・・死ぬんだ・・・」

 

「そんなことない!!そんなの嘘よ!!!」

 

気づくと涙があふれる。

 

「俺は・・・スター族・・・もしくは地獄・・・へ行くんだ・・・」

 

「ちがう!!ぜったいそんなことはないわ!!」

 

「ウィンタースノウ・・・・お前たちともっと仲良くしたかったよ・・・・・・・・」

 

「何で・・・・どうして・・・・・・こんなことに・・・・・・・」

 

「さようなら、かわいい妹」

 

その言葉を残して、兄さんは永遠の眠りについた。

 

二匹の体には、冷たい粉雪が積もる。

 

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ああww

 

マッディストリームもww

 

死んじゃいました(お前のせいだろ!!

 

ww

 

ホント乙ですww

 

提供してくださったとらおさん、本当にありがとうございました。